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失火でも賠償責任の可能性あり 楽しいはずのアウトドアで山火事を起こしてしまったら…
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日本においては、これまで「損害賠償責任」というワードは聞きなれないものでしたが、最近では自転車事故などで高額な賠償命令が出され、ニュースなどで取り上げられる機会が増えてきました。またバーベキューで使った炭の廃棄から山火事が発生し逮捕される事例などもあります。ちょっとした不注意から高額な賠償金を請求される可能性もあります。気をつけたいポイントおよび対策をお伝えします。
- コラムサマリ
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- 失火でも重大な過失があると、賠償責任を負う可能性がある。
- 山火事の平均損害額は年間で3億5,000万円以上になっている。
- 個人賠償責任保険に加入しておくと、もしものときの備えになる。
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失火でも賠償責任を負う場合がある
一般的に、自宅を火元とする火災が発生し、隣家にまで延焼させてしまった場合でも、隣家に対して損害賠償責任は発生しません。これは、失火の責任に関する法律(失火責任法)において規定されています。
しかしながら、この規定には、続く文言があります。「但し、失火者に重大なる過失ありたるときはこの限りにあらず」。つまり、「重大なる過失(僅かの注意をすれば容易に有害な結果を予見し、回避することができたのに、漠然と看過したというような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態)」である場合には責任を負う必要があるということです。
火災を発生させてしまった場合に損害賠償請求が行われる可能性があります。実際の状況などにもよりますが、寝タバコの火種が周囲の可燃物に着火した場合などは重過失があると認める判例などがあります。火災を引き起こす可能性があることを「知っていたにもかかわらず」、寝タバコをしたことに過失があるという判断です。
また、バーベキューやハイキングコースでの火の不始末が山火事を引き起こす事例も発生しています。もちろん故意的な放火は罪に問われますが、ちょっとした不注意が思わぬ事故を引き起こし、損害賠償を請求されるケースもあり得ます。
山火事の平均損害額は年間3億5,000万円以上
林野庁ホームページによると、2015年から2019年までの5年間での山火事(林野火災)は1年あたり平均1,234件発生し、661ヘクタールが焼失しています。平均損害額は、3億5700万円にものぼります。1日あたり100万円もの損失が発生しています。
(参考 林野庁 https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/yamakaji/con_1.htm)
発生した林野火災のうち原因が明らかなものは、「たき火」が30.2%で最も多く、「火入れ」「放火(疑い含む)」「たばこ」と不注意によるものがあり、落雷など自然現象によるものは稀です。
大規模な山火事として、2017年年5月8日に岩手県釜石市で発生した山火事は鎮火まで14日間かかりました。2021年2月に発生した栃木県足利市の両崖山周辺の山火事では、ハイカーの休憩場所が火元とされ、1週間にわたり燃え広がり、焼失面積は約106ヘクタールに及びました。
足利市の山火事は、平均損害額から計算すると約5,700万円の損害額を超えていると考えられます。加害者が特定された場合には、損害賠償が請求されることになりますが、簡単に支払える金額ではありません。楽しいはずのハイキングがちょっとした不注意から自分自身や家族の将来に大きな影響を与えるかもしれません。
火の取り扱いには細心の注意を
2014年にバーベキューで使用した炭火を雑木林へ廃棄したことで発生した山火事では、廃棄した会社員が森林法違反の疑いで逮捕されました。炭火の火が消えたと思い込み、確認せずに立ち去ったことが大規模な火災につながりました。「起こりうるリスク」に対して、注意すべき点に注意しなかったことから人生が変わってしまいました。
アウトドアでは、火の取り扱いや消火方法について、最新の注意を払うべきです。消えたと思っても、確実に確認するようにしましょう。一人ではなく、数人で時間をおいて確認することをおすすめします。人や設備に対しても同様に「起こりうるリスク」を想定することを心がけましょう。注意を払ったことで何も変わらないかもしれませんが、注意を払わなかったことで人生を変えてしまうことがあることを知るべきです。
もしものときのためにも保険を確認
もしものときに備えて「個人賠償責任保険」に加入しておくことをおすすめします。アウトドアでの火の不始末だけではなく、自転車に乗っていて他人と衝突し、相手をケガさせてしまった場合やペットが散歩中に近所の方に嚙みついてケガを負わせてしまった場合などの損害額が補償されます。
火災保険や自動車保険、傷害保険の特約として加入できますので、すでに付帯されているかもしれません。加入を検討する前に、現在加入中の保険証券を確認してみましょう。補償されるのは、故意でないと証明された場合です。くれぐれも注意を怠らないように気をつけることが何よりも大切です。
この記事の執筆協力
- 執筆者名
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大竹麻佐子
- 執筆者プロフィール
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証券会社、銀行、保険会社など金融機関での勤務を経て独立。相談・執筆・講師活動を展開。ひとりでも多くの人に、お金と向き合うことで、より豊かに自分らしく生きてほしい。ファイナンシャルプランナー(CFP©)ほか、相続診断士、整理収納アドバイザーとして、知識だけでない、さまざまな観点からのアドバイスとサポートが好評。2児の母。
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